ファンクラブ・ツアー




DVDを買おうと思って近くのショッピングセンターへ足を運ぶと、いつの間にか派手だったクリスマスの飾りつけは取り払われ、流しっぱなしだったクリスマスソングも過去のものになっていた。年の瀬だなぁとしみじみ思いながら、県下随一のCDショップ『タワー・レコード』の入り口をくぐる。そこからずんずん歩いて、脇目もふらずにハロプロコーナーまで直行するのだ。タワー・レコードのハロプロコーナーは固定客(僕とか!)のおかげでかなり充実しており、いつも予約なしで買うことができる。さっそく目当てのDVDを見つけ、横のエルレガーデンを見るふりをしながら1枚手に取り、そのまま平静を装ってレジで会計を済まそうとしていると、なんだか背中に視線を感じた。振り向くと、そこには悠斗くんがスーツ姿で立っていた。こいつも仕事帰りで同じDVDを買いにきたのだ!
「えっと」2人並んで仲良くDVDをお買い上げすると、彼が口を開いた。「ツアーどうしますか?」


□ □ □


この日記を読んでいるクラスの友達にも分かりやすいように説明すると、来年3月に初めてベリーズ工房のファンクラブツアーが開催されるんです。ファンクラブツアーと言えば、ハロープロジェクト・オタクにとってある意味ファン活動の頂点。ライブはもちろん握手会やポラ撮影も行われるすげえイベントなんだぜ。バカ高い参加費用と、時間の折り合いさえ問題なければ、大概のオタク達は間違いなく喜んで参加するね。
…じゃぁ、僕はどうするのか。春休みで時間はあるし、お金もどうにかなる。それならもちろん二つ返事で参加するよね?って言われたら、答えはノーだ。だいたい今この時期に、ファンクラブツアーなんていうヲタ向けのイベントへ力を入れなければならない理由が分からない。ツアーの定員800人は、たとえ僕が申し込まなくともおそらく埋まるってのに。
ファンクラブツアーの1ヵ月後に、ベリーズ工房さいたまスーパーアリーナでライブを行うことになっている。こちらは少し事情が違って、既存のファンだけでは客席を埋めることは不可能と考えられている。ライブを成功させるためには、どうしても新たにお客さんを連れてくる必要があるのだ。僕はこのライブに是が非でも行かなくちゃいけない。重要度で言うなら、ファンクラブツアーよりもはるかに上である。しかも、できることなら友達を何人か連れて行って、少しでも客席を埋めることに貢献できるのが望ましい。チケット代くらい僕が払ってやる。だから、だから誰か僕と一緒にベリーズ工房のライブを観に行きませんか。
僕たちオタクも頑張らなければいけないが、それ以上に事務所も何か手を打ってほしい。世界バレーだけでは、どうにもアピールが足りない。ライブまでにせめてもう1回、外向けのアピールをやってもらえたらなぁと思う。いま必要なのは、ファンクラブツアーでも、パシフィックへブンでもないような気がしてならないんだ。…例えば、3月7日に発売される13枚目のシングルが、何かでっかいタイアップでも決まればいいのに。


□ □ □


「ちょっと考えさせてな。」テーブルに片ひじをついて、買ったばかりのてりやきバーガーをかじりながら、僕はもそもそ喋った。「まぁなるべく早く決めるようにするよ。で、もし行くなら僕と相部屋でもいいの?」